腸内フローラを正しく知って健康・長寿を目指そう!


序章

乳酸菌。名前を聞き始めてから、随分長い間ブレークしています。サプリメント製品のCMで、乳酸菌のことを

聞かない日はないほどです。「でも、この菌って何をしているのだろう?」。などと考えたことはありません

か。また、「でも、菌って名前が付いているし、食べても大丈夫かな?」とも思いますよね。

乳酸菌は人の腸内に生息しているので腸内細菌とも言います。腸内細菌には、病原性大腸菌O-157のように悪さ

をする菌もいれば、それがいなければ生きていけないほど人の体の中で大切な役割を持つ菌も数多くあります。

ここでは、乳酸菌や大腸菌などで知られる腸内細菌について、簡単な科学的説明をします。

1.腸内フローラとは

人の腸内には、おびただしい数の細菌が住んでいます。その種類は数百から数千種類、数は千兆個近くあるとさ

れ、重さにすると2kgちかくあるとも言われています。

これらの腸内細菌は、種類ごとに集まって腸内細菌叢(そう)を作ります。腸内細菌叢は、引き延ばすとテニス

コート一面分にもなる腸の表面に、形や色合いの違うモザイク模様を形成します。

フローラ(植物相)とは、ある場所に生育している植物の総目録のことで、様々な花が咲き誇っているお花畑の

イメージです。腸内の様子をお花畑に例えて、腸内細菌叢は腸内フローラと名付けられました。

2.腸内フローラの働き

腸内フローラの働きは、

・病原菌やウイルスが体内に侵入する際の防波堤になって、それを排除する

・腸内細菌と腸の細胞の働きで免疫を司り、感染症にかかるのを防ぐ

・食物繊維の消化を行う

・ビタミンB2, B6, B12, Kを始めとして、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどを合成する

・ドーパミンやセロトニンのような、神経を通じた情報のやり取り、情動に関係する物質を作り出す

など、人が生きていく上で欠くことのできない重要な働きに関係します。

3.善玉菌と悪玉菌:腸内フローラの種類

腸内フローラは人それぞれで、千差万別と言っていいほど違っています。また、一人の人の中でも、毎日の体調

によってその中身は大きく変動します。

腸内フローラは、大まかに言えば、健康に良い働きをする1)善玉菌、健康に悪影響を及ぼす2)悪玉菌、状況

によって善玉菌のようにも悪玉菌のようにも行動する3)日和見菌(ひよりみきん)の3種類です。

善玉菌

悪玉菌との勢力争いを行うことで、悪玉菌を抑え、腸を活性化して腸の働きを活発にし、健康に貢献する菌で

す。善玉菌とは、乳酸菌、ビフィズス菌、フェーカリス菌、アシドフィルス菌などが代表的です。

善玉菌として有名な乳酸菌もビフィズス菌は、いずれも乳酸を作る点では同じですが、後者は乳酸に加えて酢酸

の生産も行います。酢酸とは、お酢のことですね。酢酸は強い殺菌力を持っている上に大腸の粘膜を保護しま

す。では、お酢を飲めばいいのではないかと思いますが、お酢は腸に行く前に消えてしまいます。そこで、ビフ

ィズス菌(善玉菌)の出番です。

善玉菌は、腸内

環境を酸性にして発酵を進めます。また、悪玉菌は酸性に弱い性質を持つものが多いため、腸内が酸性に傾いて

悪玉菌の活動が抑えられます。その結果として、腸の動きが良くなり、免疫や外敵排除などの腸

が持つ本来の役目をスムーズに行いやすくなります

悪玉菌

善玉菌との勢力争いを行う中で勢力が増すと、腸内に腐敗物質や有害物質が増えて、腸の動きが不活発になり健

康が害されます。悪玉菌の種類としては、クロストリジウム(ウェルシュ菌など)、ブドウ球菌などが代表的で

す。日和見菌に属する仲間の多い大腸菌の中にも、病原性大腸菌O-157のような「超」悪玉菌もいます。

日和見菌

腸内環境が良い時には善玉菌と同じような働きを行い、悪い時には悪玉菌と同じ働きをするなど、腸内環境に応

じて善玉菌にも悪玉菌にもなりうる菌です。日和見菌には、バクテロイデス、非病原性大腸菌、非病原性連鎖球

菌などが含まれます。

 

4. 良い腸内環境が健康維持の秘訣

それでは腸内の全てが善玉菌で占められれば良いかというと、そのようにうまい話はないわけで、人の腸内の菌

の数には大まかな割合が決まっていて、健康な人の場合、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割程度でバラン

スが良いとされているのです。

悪玉菌は、加齢、ストレス、欧米型の食生活で増えます。また、抗菌作用がある抗生物質の服用によって腸内フ

ローラの一部が死滅し、そのバランスに乱れが生じた際にも増えます。

善玉菌が悪玉菌よりも多いという菌のバランスが重要で、体調に異変が起きて悪玉菌の割合が増えると、タンパ

ク質や脂肪を腐敗させて腸内に健康に有害なアンモニアやインドール、スカトール、硫化水素などの有害物質が

増えます。そのせいで、悪臭のするおならが出て、腸内のゴロゴロ感、下痢、便秘といった排便異常が起きま

す。

さらに、腸内環境の悪い状態が長期間続くと、これらの有害物質が腸に吸収され、体内に蓄積します。その結

果、様々な健康被害につながります。さらに、腸の動きが鈍くなり、消化吸収の力が弱まり、高血圧、肥満、糖

尿病などの病気も引き起こすのです。

「一年中便秘で苦しんでいる」、「下痢が治らなくて困っている」、「最近、何だか免疫力が落ちている気がす

る」などの症状が気になっている人では、腸の中で、善玉菌が悪玉菌に押され気味である可能性も考えられます

このように、健康のためには善玉菌を増やす必要がありますが、それには限度があるため、日和見菌をうまく利

用することも重要です。 

5.腸内環境を整える機能性食品

腸の健康に良い機能性食品としては、プロバイオティクス、プレバイオティクスおよびバイオジェニックスの

3種類があります。

プロバイオティクス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロバイオティクスは、人の健康に有効な生きた細菌を含む製品のことで、生きた菌として腸内フローラのバラ

ンス改善に役立つものです。具体的には、善玉菌に相当する、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌などが生きたまま

入っている製品やヨーグルトなどの発酵乳のことです。

食品やサプリから善玉菌の生菌(生きたままの菌)を摂取すると言っても、菌が生きたまま腸まで到達するに

は、胃液と言う強い酸性の液体中を無事に通過することが必要です。このため、健康食品製造会社では、生菌を

タブレットに入れるなどの工夫を加えたサプリ製品を販売しています。

また、乳酸菌やビフィズス菌は細菌です。つまり、生き物ですから、あまり高温の場所では生きていけません。

多くの細菌と同じように50℃以上の高温では死ぬ割合が増えて行きます。従って、これらの生菌配合食品ある

いはサプリを摂取する際には、くれぐれも温度に注意が必要です。高温のお湯で飲むなどもっての他です。

プレバイオティクス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレバイオティクスとは、悪玉菌を抑えて善玉菌を増殖させ、腸内フローラのバランスを整えるものです。具体

的には、消化しにくい食品とされる、食物繊維やオリゴ糖を含む食品群です。

善玉菌にオリゴ糖などを添加したサプリ製品もあり、善玉菌との相乗効果が期待できます。

バイオジェニックス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイオジェニックスは、間接的に腸内フローラバランスを調整して体に最適な状態を作り出す成分を指し、具体

的には、乳酸菌などの細菌が生成するビタミン、免疫賦活物質、植物フラボノイドなどがこれに該当します。す

なわち、乳酸菌生産物質として分類される死菌や菌分泌物を含むサプリ製品です。バイオジェニックスでは、こ

れらの物質が、腸の持つ免疫機能を活性化して健康になることを目指しています

便秘や下痢などの直接的な腸の障害の改善を目的にするのではなく、体全体の賦活化(ふかつか)を図る点が特

徴的です。

6.健全フローラ注腸療法(ちゅうちょうりょうほう)

健全フローラ注腸療法とは、腸に障害がある人に、健常人の便を注入して腸内フローラバランスを整えて病気を

治す方法です。2000年以降、この治療法の成果が公開されてきています。

この治療法は、究極のプロバイオティクスと言える方法です。プロバイオティクスは、1種類の善玉菌あるいは

複数の善玉菌を組合せたものを生きたまま腸に到達させて腸の障害の改善を試みる方法ですが、健全フローラ注

腸療法は、健康な人の便の全部を投与します。つまり、病気の人と健全な人の腸内フローラでごっそり入れ替え

てしまおうという試みです。

健全フローラ注腸療法は欧米で盛んに行われていて、例えば、感染症の一種である多剤耐性クロストリジウム・

ディフィシル腸炎に著効を示すとの報告があります。また、最近では、この治療法を潰瘍性大腸炎患者に行って

徐々に成果も出ています。

その例を紹介します。

Borody博士らは、6名の典型的な潰瘍性大腸炎患者に、健常人の便を移殖し、治療を行いました。その結果、

1年後-13年後の患者において、潰瘍性大腸炎の症状や病理学上の所見がほとんど消え、また、再燃もないこ

とが明らかになりました(ただし移植前の前処置の抗生物質が影響している可能性などは排除できていませ

ん)。

欧米での顕著な治療効果を見て、日本でも、順天堂大学を始めとして慶應義塾大学などが潰瘍性大腸炎とクロー

ン病への臨床研究を始めましたが、欧米ほどの成果は得られていないようです。まだ症例数が少ないので標準治

療とは言えませんが今後の研究の進展に期待したいところです。

また、個人病院での潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、うつ病などに対するこの方法を使った治療も行われ、特

殊な液に健常人の便を溶かし患者に注入する、あるいは菌液の組成を患者の症状に合わせてブレンドして使うな

どの工夫も行われています。

このような状況から、一般財団法人・腸内フローラ移殖臨床研究会が2017年に発足しました。

7.まとめ

腸内フローラはものすごい数の細菌で構成されていますが、大まかに言って善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類

に分けられます。この3種類の菌の割合が健康にとって大切で、その割合が崩れると様々な健康障害が引き起こ

されます。

それを防ぐために、腸に良い機能性食品を積極的に摂って腸内環境を整えることが大切です。

「健康は腸内フローラの活性化」からです。

– – – – – – 監修医師 相澤宏樹

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