大人のアトピー性皮膚炎とは? 原因と改善方法

アトピー性皮膚炎は、多くの場合、乳幼児や小児の皮膚の病気だと考えられています。以前は大人になれば治るといわれていたアトピー性皮膚炎ですが、
近年、大人になっても治らないケースや大人になって発症するケースも増えてきました。ここでは、大人のアトピー性皮膚炎についてご紹介します。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が繰り返しあらわれる皮膚の病気です。湿疹は、主に顔や首、肘、膝などにあらわれます。
ですが、症状が重くなると、全身に広がることも少なくありません。

アトピー性皮膚炎の特徴とは?

アトピー性皮膚炎は、皮膚表面のバリア機能が弱まり、水分が出てしまっているため、乾燥している状態です。
皮膚が乾燥すると、外部からの刺激を受けやすくなります。その結果、かゆみを感じ、掻いてしまいます。
掻くことで、新しい傷ができたり、傷口が悪化したりして、さらに皮膚の状態が悪くなってしまうのです。

子供だけじゃない? 大人のアトピー性皮膚炎の特徴は?

厚生労働科学研究による全国調査(2000〜2002年実施)によれば、大学生の8.2%がアトピー皮膚炎にかかっていました。
また、皮膚科受診患者の全国調査(2007年実施)によれば、皮膚科を受診する患者のうち、アトピー性皮膚炎は、0〜5歳と21〜25歳にピークが二つあることが分かりました。
受診患者のうち、46歳以上は、全体の9%以上にも及びました。
アトピー性皮膚炎は、子どもだけの病気ではありません。大人になってからも発症する恐れのある病気です。
大人になった発症したアトピー性皮膚炎は、下半身よりも、上半身(頭、首、胸、背中)に湿疹が強く出る傾向にあります。
子供に比べ、大人は皮膚も硬くなっています。繰り返し掻くことで、さらに皮膚がごわごわに硬くなり、厚く盛り上がったりします。
子どものアトピー性皮膚炎に比べ、治りにくいのが特徴です。

参考:
広島大学名誉教授 山本 昇壯(監修)「アトピー性皮膚炎Q&A‐コメディカル患者指導のために‐」
http://www.jaanet.org/pdf/guideline_skin03.pdf

日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016 年版」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf

アトピー性皮膚炎の原因とは?

アトピー性皮膚炎は、長期にわたって皮膚の炎症が続きます。
免疫とは、本来、身体の外から侵入してくるウイルスや細菌と戦うための反応ですが、免疫が過剰に反応し、必要のない炎症が起きているのです。

身体的要因

アトピー性皮膚炎の原因の1つに、アレルギー体質があります。アトピー性皮膚炎の方は、アレルギーを引き起こしやすい体質(アトピー素因)をもっています。
人間の身体には、体内に入った異物を排除しようとする働きである免疫が備わっています。アレルギーは、この免疫の働きが過剰になることです。
さらに、アトピー性皮膚炎の方の皮膚は、もともと保湿成分が不足していると報告されています。皮膚の表面には、バリアの役割があります。
体内から水分が失われることは、外からの刺激などを防ぎます。保湿成分が不足すると、細胞の間に隙間ができて皮膚のバリア機能が弱くなり、細胞内の水分が失われます。
その結果、皮膚がさらに乾燥しやすくなります。

環境的要因

長期にわたって皮膚に刺激が続いたり、食べ物、呼吸で取り込むものによる影響も要因となります。

皮膚に触れるもの「接触要因」

肌着などの衣類、洗剤や漂白剤など残留洗剤、寝具類、化粧品、石けん、シャンプーやアクセサリーなど

食べ物「摂取要因」

アルコール類、食品添加物、水、ミネラル、残留農薬、医薬品、健康食品など

呼吸で吸うもの「吸引要因」

カビの胞子、ダニの屍骸、花粉、揮発性有機化合物(VOC)、ばい煙、砂塵など

心理的要因

ストレスや疲労から、体調が崩れ、アトピー性皮膚炎の発症の引き金になることがあります。
ストレス下の状態では、アドレナリンが盛んに分泌され、体温が上昇し、かゆみを伴うことが多くなるとされています。ストレスに晒された状態が続くと、かゆみも続くことになります。

大人のアトピー性皮膚炎は治る? 治療方法は?

子供のアトピー性皮膚炎は、成長とともに良くなっていくケースが多いですが、大人まで持ち越した場合や大人になってから発症した場合は、慢性になりやすい傾向があります。
慢性になり、こじらせてしまうと、さらに治りにくくなります。
大人のアトピー性皮膚炎の場合、完治することは難しいですが、治療や生活習慣を調整していくことで症状を和らげ、良い状態を保っていくことは可能です。

アトピー性皮膚炎を治療するには、外用療法(塗り薬)、保湿剤によるスキンケア、内服療法(飲み薬)、の3種類があります。

外用療法(塗り薬)

皮膚の炎症を鎮め、かゆみを取り除くために薬剤が使われます。
塗り薬には、ステロイド外用薬と免疫抑制剤外用薬(タクロリムス外用薬)があり、どちらも免疫の過剰な反応を抑える働きがあります。
皮膚炎の程度に見合った薬剤を適正に選ぶことが大切になります。

保湿剤によるスキンケア

ステロイドなどの薬剤で皮膚炎が鎮まった後で、皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を高めるために保湿剤を用います。
油分で皮膚の表面を覆い、水分の蒸発を防ぐタイプ、水分やセラミドを補うタイプなどがあります。
また、軟膏やクリーム、ローションなど薬剤の形も異なり、使用感や保湿効果が異なりますので、皮膚にあったものを選ぶことが大切です。
保湿を心がけることで、皮膚の炎症が悪化しにくくなります。

内服療法(飲み薬)

アトピー性皮膚炎は強いかゆみがあるのが特徴です。かゆみから掻いてしまい、さらに皮膚が傷ついてしまいます。
これを予防するために、かゆみ止めとして、抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤を服用することがあります。
塗り薬では抑えられないほど、皮膚の炎症が悪化している場合、免疫反応を強力に抑えるために、ステロイドの飲み薬を使う場合があります。
ステロイドの飲み薬は、医師に指示された量、飲み方や期間を必ず守ってください。自己判断で量を減らしたり、服用を途やめたりすると、副作用や症状の悪化を招く危険性があります。
強力な薬であるのと同時に副作用もあるので、服用は一定期間だけです。長期間、漫然と服用を続けることは好ましくありません。

重症のアトピー性皮膚炎の治療

大人のアトピー性皮膚炎では、先に述べたような塗り薬や飲み薬では、症状のコントロールができないほど重症の場合もあります。
重症のアトピー性皮膚炎に対しては、免疫抑制剤による治療が認められています。
免疫抑制の飲み薬は、広範囲に強い炎症を伴う湿疹がある16歳以上の患者とされています。使用できるのは、最大3ヶ月までです。
作用の強い薬ですので、3ヶ月使った後は、一旦、薬を休む必要があります。服用中は、血圧が上昇したり、腎臓の機能が低下したりする恐れがあり、注意が必要です。
他に、特殊な紫外線を用いた治療も行われています。いずれも皮膚科専門施設で行われる専門的な治療です。

アトピー性皮膚炎を改善するための生活習慣

アトピー性皮膚炎は、アレルギーを引き起こしやすい体質(アトピー素因)や皮膚のバリア機能の低下、環境による刺激などが悪化の要因となっています。
部屋をこまめに掃除し、入浴をして皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけることが大切です。

住居の清掃

ダニやカビなどのハウスダストがアレルギーを引き起こす大きな要因です。まずは、部屋をこまめに掃除しましょう。
エアコンフィルターや家具の上などホコリが溜まりやすいところは、気をつけてこまめに掃除しましょう。
ホコリを減らすためにも、部屋には余分なものを置かないように、モノを減らして掃除しやすい環境を作りましょう。
掃除の際には、ホコリを吸い込まないようにマスクなどをするように気をつけてください。

清潔を心がける

皮膚の炎症を防ぐためにも、清潔さを保つことが大切です。外から帰宅した時は、手洗い、うがいを心がけ、雑菌の侵入を少しでも防ぎましょう。
また、汗のかきやすい季節は、こまめにタオルで汗を拭きとるなどして、皮膚に汗が残らないように注意しましょう。

衣類は刺激の少ないものを

皮膚の清潔を保つために、肌着は毎日、洗濯したものに着替えましょう。衣服がこすれて、皮膚を刺激し、症状が悪化することがあります。
できるだけ、柔らかくて刺激が少なく、身体への締め付けがない衣類を選びましょう。伸縮部分は、ひもゴムよりも板ゴムをつかったものを選びましょう。
皮膚に炎症がある時は、通気性の良い薄手の肌着のうえに通常の肌着を重ね着するなど、皮膚への刺激を和らげるように心がけてください。

入浴はぬるめのお湯で

皮膚温度が上昇すると、かゆみが強くなります。熱いお湯は皮膚への刺激が強いので、お風呂の湯の温度はぬるめにしてください。保湿効果の高い入浴剤を使うことも効果があります。
症状がある部分は、強く擦らず、優しくなでるように洗いましょう。ナイロンたわしなど刺激が強いものは避けましょう。石鹸やシャンプーの使い過ぎは刺激や乾燥につながります。
2〜3日に1回のペースで使うようにしましょう。

バランスの良い食生活を

体調により、皮膚の状態も左右されますので、食事や睡眠は大切です。バランスの良い食事と規則正しい生活を心がけましょう。
飲酒は、かゆみが増します。できるだけ控えるように心がけてください。完全にやめることができなくても、適度に休肝日を設けることでコントロールしてください。

ストレスに注意

ストレスは、症状を悪化させる原因となります。
仕事や家庭などの日常生活のストレスだけでなく、アトピー性皮膚炎の症状がストレスとなり、さらに悪化させてしまうこともあります。
アトピー性皮膚炎に対して神経質になりすぎないように、できる範囲で改善していくようにしましょう。
ストレスをためないように、ご自身なりの解消法を見つけてください。ストレスに強くなるためにも、十分な睡眠や規則正しい食生活は大切です。

まとめ

大人のアトピー性皮膚炎は慢性化しやすく、完治が難しいものですが、皮膚の清潔と保湿を心がけ、バランスの良い食事をとり、規則正しい生活を続けることで改善することができます。

– – – – – – 監修医師 相澤宏樹

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