ホットフラッシュの原因と症状を抑えるためにできること

ホットフラッシュとは?

ホットフラッシュについて、原因や仕組み、更年期障害との関係、治療や改善方法などを本記事では紹介します。まずは、ホットフラッシュの症状における特徴や更年期との関係性について説明します。

更年期障害の代表的な症状

女性は、50歳前後が閉経時期とされ、45~55歳の10年ほどを更年期と呼びます。この時期にはエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が減るなど閉経に伴うホルモンの変化が自律神経の乱れを引き起こします。これが女性の更年期障害の正体です。代表的な更年期障害として「ホットフラッシュ」が挙げられます。

慢性的な疲れやストレスなどから来る自律神経の乱れとの大きな違いは、女性ホルモン量の変化する時期に、症状が突然起こることです。ストレスが増えたわけではなく、これまでと何も変わらない生活で落ち着いた心身状態であったにもかかわらず、ホットフラッシュのような症状だけが突然現れるようになります。例えば、顔が急に暑くなって、汗が出始めてしまうなどです。別に暑い空間にいるわけでもないのに、サウナにでも入ったかのような息苦しさや顔のほてりを感じる症状です。

時期は個人によってさまざまですが、だいたい5年から長くても更年期障害の期間は7年前後です。一般的に、この期間にホルモン量が安定するためと言われています。ホットフラッシュを引き起こす更年期障害は、他の病気や自律神経失調症と症状が似ている(重なる)部分も多く、間違った治療をしないために、慎重に更年期障害かどうかを見極める必要があります。

自律神経失調症状の一種

女性のエストロゲンの場合、視床下部という脳の部位から指令を出してホルモンを分泌しています。しかし、更年期によって上手く卵巣がホルモンを作れなくなると脳は混乱し、ホルモンバランスが崩れます。指令を送ってもホルモンが増えず、何とか脳がホルモン量を増やすためのアクション(急激に交感神経を活性化するなど興奮状態にする)を起こさせます。卵巣がホルモンを上手く作れないことが結果的に自律神経を不安定にします。

そのため、更年期障害によるホットフラッシュは分類上、自律神経失調症状の一種であるとも言えます。実際に、原因は自律神経の乱れで症状が引き起こされていることや、ホルモンが影響しているだけで、上手く自律神経をコントロールできない。つまり、自律神経失調症と変わらない症状が出ているからです。

およそ80%以上の女性が経験する

女性は子どもを生む適齢期を過ぎると、性熟成期を経て更年期、初老期という時期を必ずたどります。そのため、ホルモンバランスの変化は女性では通過儀礼となります。そこから派生した症状の更年期障害は、症状を自覚している人でホットフラッシュについては8割を超える人が経験します。

命に関わることはないが、不快である

ホットフラッシュは、ホルモンバランスの崩れに体の機能調整やホルモンの分泌が追いつけないことで起こるだけであるため、一時的な症状である場合が多いとされます。症状そのものによって命に危険はありません。もちろん、別の病気が隠れ潜んでいて、それがサインであるという場合は別です。しかし、更年期に突然現れた症状でホットフラッシュが起こることは珍しくありません。

ホットフラッシュの症状

症状に多いものとして、顔がほてる、動悸、上半身の汗が急に出る(止まらない)などがあります。ホットフラッシュ、つまり、ホット(暑い)状態がフラッシュ(瞬間的に)起きる症状と理解することが出来ます。では、それぞれの症状について詳しく見てみましょう。

ほてり、のぼせ

ほてりやのぼせには、普段はない症状の一つです。更年期障害に起きるホットフラッシュに似た症状に、精神的な顔のほてりや日焼けのほてりがあります。精神的に起きる症状は、人前に出たときに起きるものなどが特徴的です。緊張により交感神経が優位になり、顔がほてった状態になるものです。しかし、過程や症状は似ていますが、更年期のホットフラッシュとは違います。日焼けも外的要因なので全く違うものです。

ほてりは、ホルモンバランスが崩れて症状が起きるため、別に緊張する場面ではないのに症状が現れたりします。特に突然現れてしまうために、困ってしまう人も多いことでしょう。公共の場で突然首や顔が真っ赤になったりのぼせて立ちくらみのようになったりしてしまうのは人目が気になるものです。

また、ほてりに加えてのぼせも症状の一つです。実際に上半身が暑いと感じていればそれは「ほてり」です。しかし、のぼせは、実際に血流が上半身のさらに上である顔に集中してしまうため、別の症状が体の各所で発生するなどします。例えば、上半身が暑いのに下半身が冷えるなど、冷え性の症状が現れたり、交感神経優位で起きる肩こり、偏頭痛や疲労感などを伴う精神的な苦痛です。お風呂に入ると顔だけ暑いのぼせは起こりますが、こちらもほてり同様に行動や置かれた状況環境とは関係なくのぼせてしまいます。

発汗

発汗は、誰でも暑いとき日常的に汗を出しているものです。そのせいで、特別な症状ではないと考える人もいるかもしれません。しかし、更年期に起きるホットフラッシュの発汗はかなり困った症状の一つです。例として、寝ている間に汗をかき、起きてみると大量の汗で衣服がべたべたになっていた、ちょっと動いただけなのに、下着までびっしょりだった、などのようなものです。通常の人が出す汗は夏場でもそこまでひどいことにはなりません。ところが、ホットフラッシュで生じる発汗は、一時的に大量の汗が出てしまい、しかも汗の兆候である脈絡がないことです。季節など全く関係なく、交感神経が興奮したときに汗を出してしまう症状を引き起こします。

ホットフラッシュで悩む人の中には、発汗の症状で頻繁に衣服を着替える必要がある、交の場で汗をかいているのが分かって恥ずかしい目に合うなど、被害を受けている方もいます。また、夜間の寝汗がひどい方は、睡眠障害(良く眠れない途中で起きてしまうなど)や寝苦しさをから寝るという必要不可欠な行為に対して精神的な負荷が生じてしまうことです。こういった緊張は、交感神経を優位にして、眠りの妨げになったり睡眠が浅くなったりする要因にもなります。

動悸

動悸は、突然に心臓がドキドキしだしたりする症状です。心拍や脈が突然上昇するとも言い換えられます。一緒に起こる息切れなどの症状などがあり、胸の締め付けられるような苦しさと息苦しさなどを同時に感じることもあります。別々に症状が起こることもあって人それぞれ頻度や度合いが違うため、更年期の動悸であるかどうかの判断は難しいとされています。

基本的には、動悸が症状として現れると、さまざまな原因が考えられます。特に更年期障害に限った症状ではないこともあって、更年期の症状と自覚せずに動悸を感じる方も多いでしょう。心臓や循環器系の医療機関で病気がないかを見てもらう人もいますが、更年期障害が原因であった場合、ホルモン以外に大きな原因が見つからないときは、更年期のホットフラッシュである可能性です。そういった場合は、精神的なストレスが原因であるのか判断するために、どんなときに症状が出るのかを記録しておくと、何が原因なのか特定しやすくなります。

紅潮

紅潮の症状は顔が赤くなる代表的なものです。更年期障害に多い症例として、顔面紅潮などが挙げられます。血の色が表面に現れる紅潮は、ほてりやのぼせなどと一緒に現れやすいものです。また、動悸や高血圧などの症状があれば、赤くなる状態が発生します。更年期障害におけるホットフラッシュで一過性として赤くなるだけであれば、それほど問題はありません。しかし、顔が赤くなってしまう外見的な症状であることや体の内側では上半身に血が集まりやすい状態になっていることを考えると、更年期に対処したい症状の一つに数えられます。

【他の経験がある更年期障害の症状】

肌が乾燥する、抜け毛

肩がこる、疲れやすい

偏頭痛、めまい、立ちくらみ

情緒不安定

高血圧

便秘、下痢、吐き気

骨が脆くなる

など

事実、他の更年期障害の症状は、更年期でなくても環境や状況によって体験したことのある症状が多いでしょう。ホットフラッシュが特有の症状を有していることがはっきりと分かります。

症状が発生する頻度

人によって症状が現れる頻度はケースバイケースです。1日に何度も症状を感じる人もいれば、1週間~数ヶ月に1度あるかどうかの人もいます。どのタイミングで起きるかは、体内の作用頻度によります。ホルモンが少ないから脳は卵胞刺激ホルモンを出し、刺激するために交感神経を一時的に強めます。しかし、それでもホルモンは増えません。その過程で起こる症状がホットフラッシュです。

実際、個人により頻度はさまざまで、脳がホルモンを少ないと感じて交感神経を優位にしようとすることで起きます。1日の回数なども実にさまざまです。しかし、ホットフラッシュは他のこれまで経験したことのある頭痛や肩こりなどの症状とは違い、汗が出たりのぼせたりと精神的にきつい症状が多く、体験したことのないものが多いため、更年期障害でも悩みの種として医療機関に相談されるものです。

ここで説明を加えると、更年期障害の一つである「冷えのぼせ」があります。末梢血管が収縮(交感神経が優位になることで起こること)であるため、上半身に血が上りやすく、手先が冷えやすい状態です。首から上だけ拡張して顔がほてり、それがストレスとなって血圧が高い状態が増えます。ホルモンを出そうと興奮することで生じる症状であるため、一過性の症状であるホットフラッシュですが、このように継続的に交感神経優位の状態が生じて慢性化(持続)すると高血圧症になる可能性があります。

緊張した状態が高血圧を生み、高血圧は血管に負担をかけて硬くする(動脈硬化)を誘発しますから、更年期を抜けたときに高血圧だけ進行していることも見られるので気をつけましょう。

ホットフラッシュの治療

実は、ホットフラッシュを対症療法として症状を抑えることは出来ます。しかし、直接、根本を直す治療と言うのは存在しません。そのため、長期的に体の状態を整える生活食事指導や、更年期を脱するまで症状を軽くする目的で投薬などが行われます。

ホルモンの投与

女性ホルモンが足りないために起きる症状を抑えるため、実際にホルモンを増やす投薬治療がホルモンの投与です。現在の医療では、「ホルモン補充療法」が有名です。しかし、ホルモン補充療法は、体の中で作られるホルモンとは違って、外部の人為的に投入されたホルモンです。そのため、血液の中に入れても体の反応で分解されてしまう可能性が高まります。したがって、一度投与すればホルモン量が改善するわけではなく、繰り返しホルモンの投与をすることが必要になります。

また、ホルモン投与以外の治療薬が利用されることもあります。例えば、抗うつや抗不安などの精神に関与する投薬です。脳から出される異常な指令に対して起こる精神的な症状を抑える場合に使います。加えて、睡眠導入剤など、ホットフラッシュに関連して寝る前のリラックスや副交感神経の優位になる状況を作るために処方されることがあります。

漢方薬

漢方では、女性ホルモンの不足を「腎虚」、精神的な症状を「精神不安」として捉えます。腎虚は脳に血液が足りないことで起こる症状を改善するための作用があります。代表的なのは、八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などです。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)も用いられます。

精神不安に対しては、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)などを使って症状を緩和します。

ホットフラッシュの症状に対する治療としては、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、女神散(にょしんさん)などがあります。各症状から複数の症状が発生するため、漢方を利用する場合は個別に見てもらって自分に合った処方箋を用意してもらう必要があります。例えば、お医者さんで一つだけ漢方を処方してもらっても他の症状が改善しないと言ったことが起きるためです。

栄養バランスのいい食生活

ホットフラッシュが起きるときは、身体にストレスのかかった状態です。そのため、ストレスを抑制するための副腎皮質ホルモンが分泌されてビタミンCを材料に使ったり、ストレスに対するビタミンB群が消費されやすくなります。そのため、栄養バランスをよくして、食生活に配慮する必要があります。

腸内フローラを整える

脳はストレスや異常な振る舞いで腸内にも影響を与えます。特に腸は巨大な自律神経機構として知られています。更年期障害では下痢や便秘などの症状が出やすくなるので、腸内フローラのバランスをとって腸内を整えましょう。

運動

特に顔や首から上に熱を感じやすい、発汗に偏りがあるなどの場合は、運動によってストレスを発散すると同時に余分な水分を体の外へと排出しましょう。ホットフラッシュで末端の手足が冷えるときに歩くなどの適度な運動で、冷えや血圧の調整にも良い効果をもたらします。さらに、運動の刺激は腸内にも伝わりますから、腸が弱っている場合にも蠕動運動を刺激するので効果的です。

サプリメント

女性ホルモンが不足している場合、それを補助的に補うサプリメントが有効な場合もあります。それほど強いホットフラッシュの症状が現れていない更年期の方であれば、サプリメントで女性ホルモンの役割やそれを補助する大豆イソフラボンプラセンタなどを摂取するのが良いでしょう。

男性にも起きるホット

フラッシュ最後に女性でよく聞かれる更年期ですが、実は男性にもその症状が現れます。詳しく見てみましょう。

男性ホルモンの低下によって発症する

男性は、20代を境に男性ホルモンであるテストステロンが減少し始めます。減少がピークを迎える40代50代頃には更年期障害が起きることがあります。症状の中には先に挙げたホットフラッシュが起きる方もいます。だんだん減ってきて、40代に差し掛かった段階でさらに急激な落ち方をするので、症状が現れる場合は30代~40代よりもそれ以降の50代近い方が多いでしょう。一時的な現象であるため、男性の場合も女性と同じでホルモンのバランスが安定してくれば更年期の症状はなくなります。期間もだいたい5~6年です。

ホルモンの低下によって起きるその他の症状

男性の場合も、脳の異常な興奮などが原因です。そのため、女性に見られたホルモンの低下が関与するホットフラッシュ以外の症状も見られます。精神的に不安定になる(いらいらする、太りやすくなる)、尿や性機能が低下する、うつになるなどが主な症状です。

有効な治療法に「勝負」や「優越感に浸る」がある

男性の場合、男性ホルモンを優位に出来ればよいため、ホルモンを投与するより精神的な対策で症状が改善する場合があります。例えば、男性にとっての男性ホルモンを活性化させる勝負事をして競走したり(運動やゲーム)、自尊心を保って優越感に浸る行為(心理的な見方の変化など)そのものがホルモン分泌を活発にすることが知られています。

まとめ

今回は、更年期障害で代表的なホットフラッシュについて取り上げました。更年期障害が起きる仕組みを理解した上で、適切な対処を行えば比較的軽い症状で更年期を乗り切ることが可能です。ホルモンの投与や一時的な症状の対策だけでなく、栄養の摂取や腸内環境の維持なども大事です。また、男性についても女性の更年期同様に症状が現れることがあります。それぞれ性差を踏まえて症状にあわせた治療や対策を施しましょう。

– – – – – – 監修医師 相澤宏樹

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