骨粗鬆症の原因と乳酸菌による対策

骨粗しょう症

近年、よく耳にする言葉に骨粗鬆症というものがあります。被介護者や高齢女性で特に多く使われている言葉で、ここ10年で身近な言葉になりました。しかし、骨折などの高いリスクを伴う病気にもかかわらず、多くの方(特に女性)はこの病気の危険性をあまり認識されていないことが多く、またその対策も不十分であることが問題点として挙げられます。そこで、骨粗鬆症の原因やその特徴と乳酸菌による対策などについて解説します。

骨粗鬆症という病気について

病気の概要

骨粗鬆症は、いわゆる骨の強度(骨密度)が下がる疾患で、自覚症状がないまま骨折していることがありえる病気です。ポイントは、「いつのまにか」骨がスカスカになっていて、骨折した後から骨粗鬆症を患っていたことを知るケースが増えていることです。健常者であれば骨折は、交通事故にあったり、階段から落ちたりしないと発生しません。しかし、骨粗鬆症患者は、強風に煽られて受身が取れずに転倒したりするような場合だけでなく、軽く転んだり、脚を引っ掛けて強い力が腰にかかっただけでも骨折してしまう可能性があります。

イメージとして「ぼきっ」と折れるのではなく、「ぐしゃっ」とつぶれるように圧迫骨折が起こることが多い傾向にあります。そして、半分近くの骨粗鬆症患者は骨折しても痛みを感じません。骨折するほどの転倒ではなく、ちょっと転んだだけなのに、骨が折れて寝たきりになる高齢者の数は増えています。骨折部位を見てみると、背中や手足が多く、寝たきりになる人の12%が転倒・骨折によるものと厚生労働省の調査で判明しています。

特に大腿骨の骨折は、骨粗鬆症の割合が大きく、寝たきりや生命維持の危険すらあります。理由は、大腿部の骨折によって、全身の活動率が下がり、他の臓器の活動レベルまで下がるため、トータルの生存率が下がっていくためです。2007年の調査で、骨粗鬆症とみられる大腿骨付近の骨折が14万人近くと10年で5万人近く増加しています。

女性の罹患率は男性の三倍?

寿命が長くなって、高齢者が増加するとともに骨粗鬆症が顕在化してきました。現在、患者や予備軍の方を含めてたくさんの日本人が骨粗鬆症になる可能性があります。事実、日本総人口の1割近い1280万人以上が発症していることがわかっています。特に、女性は男性の3倍近い罹患率があります。原因は、女性の骨量が男性より少ない密度のまま青年期で最大値になる点や、女性の更年期障害による骨を作るホルモンの減少など、女性が罹患しやすい環境が作られるからです。

ちなみに骨密度は、18歳前後で骨の強度が最大値になります。20歳以降は数%程度の上昇はあっても、大きく増えることはありません。相対的には、25~30歳は最大値に近い状態でわずかに上昇することもありますが、大きく変化することはありません。したがって、骨粗鬆症を予防する場合、今ある骨密度をキープすることが基本です。

とはいえ、女性だけに特有の病気ではなく、男性も条件さえ整えば骨粗鬆症を発症します。男性も更年期になると、男性ホルモンが減ります。骨を作るホルモンは減少して骨粗鬆症になります。

検査と診断方法

骨粗鬆症は自覚症状がほとんどなく自己判断が難しいため、必ず診察と検査でチェックする必要があります。最近は、検査の精度が上がっているため、骨密度の割合から病気かどうかの診断をはっきりと下すことが出来ます。まず、検査対象となる方は、自己診断や問診などをチェックすると良いでしょう。

【自覚症状のある方の問診の一部】

身長が数センチ縮んだ

腰や背中が痛い、違和感がある

腰や背中が曲がってきた

次に、検査の箇所は、全身、股関節、腰椎、腕の骨密度などを測定します。簡単な検査であれば、X線検査です。すでに骨折してしまった場合、まずはX線検査、一般的にはレントゲン検査と呼ばれることもありますが、骨だけを透かして写し取ることが出来る定番の方法です。骨折などを検査する以外は、大まかな骨の状況しか分からないため、どの程度の骨粗鬆症が進行しているかはアバウトにしか分かりません。それでも骨折や骨の歪みが分かります。他にもX線を使わないため妊婦の骨密度測定が可能な定量的超音波測定法やRA法、CT測定法などがあります。

次に、よく使われるのは二重X線吸収法と呼ばれる最新の測定方法です。DXA法という略称の方法で、骨密度の検査を精密に出来るようになったのが特徴です。よって、骨粗鬆症の症状を正確に診断が出来ます。以上の検査は、横になって上から測定する方法であるため簡易的で、患者の負担が少なく済みます。横になった状態でさらに足を台の上に乗せたりする場合もあります。だいたい10~15分の時間で終了します。

検査基準の1つとして20~44歳の平均骨密度の70%以下です。例えば、62%の骨密度と検査で判明すれば、骨粗鬆症と診断されます。この場合、カルシウムなどを投薬し、病気を改善していきますが、時間をかけて治療しても、数%骨密度を上昇させるのがやっとでしょう。そのため、段から骨密度を維持して、骨粗鬆症を予防するかが大切です。

また、補足として、骨粗鬆症の診断・検査は、いまだに開業医病院の医師の一部には、病気ではなくただの老いや老化減少と思われています。よって、専門医が少ないのが現状です。専門の機材で診察や検査を受けるためには特定の病院を紹介してもらう必要があります。このように、専門に症状を診察して検査できる病院は限られています。お近くの整形外科にご相談してみるのもよいかと思われます。

骨粗鬆症の二つの原因

骨粗鬆症はその原因によって大きく2つに分類されます。

原発性骨粗鬆症

1つ目は、原発性骨粗鬆症という、一般的に老いと伴に骨が脆くなるのはこの骨粗鬆症の方を指します。原因は、女性の閉経後や老化によってホルモンが低下し、骨の密度が減ることです。高齢女性の多くが原発性骨粗鬆症を発症します。

続発性骨粗鬆症

次に、2つ目の続発性骨粗鬆症です。こちらは、明確に骨粗鬆症(骨の骨密度が低下する)の原因となる病気がある場合に発症します。骨粗鬆症の症状進行や事故防止は、基本的に原因となった病気を治療することで改善できることが一番のポイントです。

例えば、副甲状腺機能亢進症など甲状腺の病気でホルモンが異常に分泌されるのが原因です。他にも糖尿病やリウマチなどでも骨粗鬆症の症状が現れます。これらの原因を解消しなければ、いくらカルシウムを補給して治療しても骨粗鬆症の病状進行を止めることはできません。根本的な解決には、元になる病気の治療が必要です。

エストロゲンとの関連が深い

原発性骨粗鬆症で挙げた女性の閉経後に多く発症する理由は、骨を作っているホルモンであるエストロゲンと症状の関連がとても深いことです。実際、50代(更年期)に原発性骨粗鬆症が発生して、高齢になった後も治療を続けている女性の患者さんはたくさんいます。

では、なぜエストロゲンと言う女性ホルモンが減少すると、骨粗鬆症になるのでしょうか。閉経後の女性は女性ホルモンであるエストロゲンが急激に低下するため、骨を作るためのホルモンが不足します。骨を作る女性ホルモンが減ると、今度は骨芽細胞の働きが弱まり、骨を作る量が少なくなります。このように骨代謝のバランスが崩れて溶ける量が多くなると骨粗鬆症になります。

具体的には、「破骨細胞」が骨を溶かし、「骨芽細胞」が骨を作ることを毎日人の体内の骨は繰り返しています。その骨芽細胞による骨を作る働きはホルモンによって強まったり弱まったりします。結果として、破骨細胞の骨を溶かす方が多くなり、バランスが崩れて骨粗鬆症の状態である骨がスカスカになります。骨は3ヶ月で全てが生まれ変わるほど活発なサイクルを繰り返しています。条件さえ整えば、短期間で骨が脆くなってしまうことも十分にありえます。

上記のように骨粗鬆症が起きる原因は、複雑なものは一切ありません。続発性骨粗鬆症のように病気が骨密度に影響を与えるようなものであったとしても、バランスを崩す状態でしか病気にならないからです。

加えて、骨はカルシウムの貯蔵庫としての機能があります。副甲状腺ホルモン(PTH)の作用は溶解を促し、吸収はビタミンD3が活躍します。血中濃度はカルシウム値を一定にしします。そうしないと循環器系(脳や心臓)の働きを阻害してしまうからです。不足分を補おうと、骨から血中にカルシウムを放出しますから、慢性的なカルシウム不足や病気によるカルシウムの過剰放出で骨は骨密度を減らします。

もう1つ、太陽に当たらなくなった人が骨粗鬆症の症状を発症する場合があります。これは、骨を作るために必要なビタミンDを、人間は太陽の紫外線が身体に当たることで体内生成しているためです。夜型の仕事をしている方や家の中で太陽に当たる時間が少ない方は、将来的な骨粗鬆症の発症リスクを高めます。骨密度を減らさないために外を短時間でも歩くなどして紫外線に当たる必要があります。

また、現代はストレス社会と言われていますが、ストレスを減らすのも大切です。ストレスに対して人は対抗するためにコルチゾールの生成を行います。この生成過程でビタミンDを消費してしまうので、太陽に当たらないのと同様に骨の生成に影響が出るからです。

さらには、重力との関係も深いものがあります。宇宙飛行士は無重力状態で十数倍の速さで骨密度が減少すると報告されています。原理としては、骨が重力などの外部からの力が加わることで、骨の強度が必要であると判断します。その結果、骨を強くしようと脳は命令を出します。しかし、骨に力が加わらない状態で過ごしている方は、骨密度が減少するリスクがあります。

無重力状態に長くいる場合は一般的にはちょっと特殊ですが、普段運動していない方や寝たきりでほとんどベッドの上にいると言う方は、骨に重力(加重)が加わらないために骨密度が低下する傾向におちいります。

重力だけでなく、骨に刺激を与えるような運動をすることで、骨密度の維持が可能です。軽く歩いたり、強度のある筋力トレーニングをしたりなどです。スクワットや足上げなども効果があるとされています。しかし、すでに、骨粗鬆症と診断された方や、それに近い骨密度しかない高齢の方は、激しいトレーニングはあまりしないほうが良いでしょう。ちょっとした圧迫が骨折に繋がる危険があるからです。軽いウォーキングと一緒に、日光に当たるなどして骨を丈夫にするのが良いでしょう。

一方、体内の血液中にカルシウムの多い状態が続くと腎臓に負担がかかり尿路結石などになるのは有名な話です。カルシウムをたくさん取るために大量の牛乳を飲むことで「ミルクアルカリ症候群」(高カルシウム血症)になるケースもあるので、骨粗鬆症予防のカルシウム摂取は大事ですが、カルシウム周りの栄養バランスは過剰摂取・不足がないように適量の摂取量を調整します。特に医師からカルシウムやビタミンDを服用されている場合、骨粗鬆症だけでなく、高カルシウム血症にかかっていないかなども同時に検査で調べる必要があります。複数の活性型ビタミンD3を大量に摂取しないように接骨院などで関節や腰の治療を受けている場合は、骨粗鬆症などの治療とバッティングしないように投薬にも気をつけましょう。

骨粗鬆症の改善を目指すための食生活

次に、骨粗鬆症を改善したい方や予防に取り組みたい方が摂取したい食品について紹介します。

カルシウムの摂取(食品の例)

骨粗鬆症の改善には、カルシウム製剤の投薬の可能性もありますが、加えてカルシウムを効率的に摂取するための食事療法も重要です。カルシウムを多く含む食品には、牛乳、ヨーグルト、にぼし、納豆、こまつな、ししゃもなどがあります。

カルシウムの吸収を促進する成分の摂取(食品の例)

実は、人の体はカルシウムだけを単独で摂っても骨密度にほとんど影響を与えない(増えない)ことが研究の成果で分かっています。そのため、サプリでカルシウムだけを摂っても骨は定着しません。そこで、カルシウムの吸収を促進する成分を食事で一緒に摂取する必要があります。

まず、カルシウムに必要なビタミンDです。ビタミンDはカルシウムが吸収されるのを助けます。含まれているのは、納豆などの大豆製品、ほうれんそうなどの野菜、きのこ、イモ類、鮭、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、魚や動物の肝などです。

その他、骨を作るために必要な成分(食品の例)

ビタミンKは、カルシウムが骨に定着するのを補助します。食品として主に納豆、ほうれんそうなどの緑黄色野菜などに含まれます。以上の食品から、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど栄養をバランスよく摂取しないといけません。

注意:カルシウムの吸収を阻害する食品や嗜好品

骨の吸収を阻害する要因としてあげられるのは、リンや塩分の摂り過ぎです。カップラーメン、ポテトチップス等のスナック菓子、ジュース、ラーメンなどの濃い汁物などです。汁物は残すようにするのがベターです。

乳酸菌の摂取も骨粗鬆症に有効!

骨の定着に有効なビタミンKは腸内細菌などによって体内で作り出されることが知られています。そのため、外部からの栄養だけでなく、骨粗鬆症には腸内環境も大きく影響します。

腸内フローラを整え、栄養の吸収をスムーズにする

腸内環境、つまり腸内フローラを整えることは、体の健康には欠かせません。特に消化できない物質を良い栄養素に作り変えるなど腸内細菌にしか出来ないことがあるためです。そして、腸内を活性化して腸内フローラを整えることで、腸内の老廃物をなくし、栄養の吸収をスムーズにすることが出来ます。腸内の善玉菌を増やすのが近道ですが、経口で腸内細菌の乳酸菌株を摂取するのが有効です。これによって腸内の善玉菌の数を増やし、悪玉菌に対抗して善玉菌優位にします。

女性ホルモンに似ている成分を生成

大豆に含まれる大豆イソフラボンという栄養素があります。大豆イソフラボンにはダイゼンという成分を含んでいて、ダイゼンを腸内細菌が代謝することでエクオールという物質を生成します。

エクオールは、女性ホルモンに似た働きをします。しかし、この骨粗鬆症に有効なエクオールですが、実は全ての人がこれを作り出せる腸内フローラではないことが分かっています。納豆や乳酸菌摂取などで腸に取り入れていない人には、そもそもダイゼンを代謝してエクオールを作り出せないのです。

腸内フローラを整えて、大豆イソフラボンを生かしたエクオールを作り出す工程を腸内細菌にしてもらう必要があります。そのため、腸内環境のケアは、健康や調の状態を良くするだけでなく、骨粗鬆症を改善・予防するための体作りで重要なポイントと言えるのです。

まとめ

今回は、骨粗しょう症の原因と乳酸菌を摂取することで対策をする方法についてご紹介しました。これまで詳しく知られてこなかった骨粗鬆症の実態や、女性ホルモンが骨粗鬆症の予防には必要であることがご理解頂ければ幸いです。そして、更年期には女性ホルモンが確実に減少することから、その時に備えて継続的なカルシウムや補助的栄養の摂取に加えて、腸内環境で女性ホルモンを作る下地を整える重要性をしっかりと確認しましょう。

– – – – – – 監修医師 相澤宏樹

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